』やチェスタトンの『廊下の男』、それからジャックス・フットレルの『十三号監房の問題』などと並んで、比類なく輝かしい高所に位する傑作である)。それは、メルビイル・デビッスン・ポーストの『ドウムドーフ・ミステリイ』で、遠隔の殺人者というのは外でもない太陽である。太陽が密閉された部屋の窓硝子に照りつけ、ドウムドーフが卓子の上に置いていた酒瓶をレンズと変じ、壁にかけられた銃の雷管に焦点があたって遂に発射させる。ためにベッドに臥していた主人の胸板が射抜かれてしまうのである。
(七)、前に挙げた(五)と全く逆の効果を狙った殺人方法即ち、被害者は実際より余程前に死んだように思われている場合である。――被害者が麻酔剤か何かで人事不省に陥った儘密閉された部屋で横たわっている。ドアを劇しく叩いてみても中から少しも返事がないので、犯人である人物がもしやと云い出して皆と一緒にドアを破る。この際犯人が真先きにはいって行って相手をナイフか何かで殺してしまう。
 この方法の発案者はイスラエル・ザングウイルであるが、爾来《じらい》この着想は様々な形で繰返されて来ている。

 以上は文字通りの密室、或はそれと殆んど同じ
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