襲う、ひと頃は鳴らせる音曲師なり。
七代圓太郎――先代橘の圓《まどか》門下。百圓より七代目圓太郎たり。
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これを要するに二代三代は知らず、他はことごとく音曲師だったわけである。
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続寄席囃子
鼻の圓遊・木更津
昔の芸人には、ずいぶん愉しい心意気の人がいた。
中でもすててこをはやらせた鼻の圓遊は、
「俺は、まだ、いっぺんも駆け落ちをしたことがない。死ぬまでにいっぺんでいいから、駆け落ちの味を知っておきたいものだ」
と言って、晩年、とうとうさる[#「さる」に傍点]商売女を頼んで、木更津まで逃げてもらったそうである。
頼んで逃げてもらったのでは、まるで京伝の黄表紙にある「艶気蒲焼《うわきのかばやき》」の浮気屋艶次郎みたいなもので、
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※[#歌記号、1−3−28]こんなえにしが唐紙の
鴛鴦《おしどり》のつがいの楽しみに
泊まり/\の旅籠《はたご》屋で
ほんの旅寝の仮まくら
うれしい仲じゃないかいな
[#ここで字下げ終わり]
と「落人」にあるような味な雰囲気なぞ滲み出そうわけもなくどこまでも艶
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