そこで白酒を売っていたと思え、これで山川白酒[#「山川白酒」に傍点]とはどうじゃ。おかしいか」というと一同「げにおかしき次第と存じ上げます」殿様「しからば次へ下がって、苦しゅうない一同笑え」――そこで次の間で声を揃えて、「あははのはあ」と頓驚《とんきょう》な笑いで落《サゲ》になる。それから「箱根の関所」をやった。「あらとござい[#「あらとござい」に傍点]」という声の、今も忘れ得ぬ妙なおかしさ――。
 ※[#歌記号、1−3−28]東京の名所を知らないお方――を歌うと三代広重の開化三十六景が古びたおるごうるとともに展開され、※[#歌記号、1−3−28]ありがたいぞえ成田の不動――とありがた[#「ありがた」に傍点]節には愚昧でそぞろ哀れの深い、そのかみの東京人の安らかな生活の挽唄がある。※[#歌記号、1−3−28]高い山から――を踊ると鳴り物入らずの仕方たくさんで、阿蘭陀渡来の唐人踊りは※[#歌記号、1−3−28]さっさ唐でもよいわいな――と安政版の時花唄《はやりうた》を思わせる。あの時歌六の両の手が楽屋の鉦の音につれて棒のようになるのもいい。――改良剣舞源氏節で※[#歌記号、1−3−28]
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