て同君がはるばる八王子駅まで帰って来たら、山なす出迎えの人たちの中で一人がブーブーこれを吹き立てた由だ。喇叭の圓太郎襲名に相応しいいかにもうれしい話ではないか。その話の最中へ、桂文楽君がやってくる。昨日文楽会忘年宴を休んだため、心配して来てくれたのなり。かたがた、来春の文楽会の打ち合わせ、向上会のことなど、いろいろ相談する。相変わらず文楽君の話はその得意とする「つるつる」や「干物箱」や「鰻の幇間」中の人物のように軽くやわらかく愉しくていい。師走を忘れて他愛なく笑ってしまう。
文楽君帰り、やがて百圓君たちも帰る。
早い夕食を終えて女房と、近くの大塚鈴本へ。今夜は太神楽大会。去年見損っていたものなり。入って行くとすっかり年老《としと》って見ちがえてしまったバンカラの唐茄子が知らない男と獅子をつかっている。楽屋で時々「めでたいめでたい」というような声をかけるのがひどく古風でおもしろい。続いて唐茄子がやはり知らない男と「神力万歳」というむやみに相手の真似ばかりしたがる可笑味のものを演る。理屈なしに下らなく可笑しい。温故知新というところだろう、まさしくこれなどは。そのあといろいろ間へ挟まる曲
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