の人たちがアッと目を瞠るだろうとおもうんだ」
「……」
 またしても目が肯いた、嬉しげに、頼もし気に。
「ああ演りたい、早く演りたいなあ、一日も早く。それを演って二千七町八百八町を引っ繰り返してしまいたいんだ、ああ、ほんとに早く私は……」
 今から大舞台いっぱいの豪華絵巻を目に描くとき、早くもとてもこうやってはいられないほどの芸拗を全身全魂に感じだしたらしく圓朝は、また半分ほど酌がせたなおし[#「なおし」に傍点]を今度はひと息に飲んでしまい、ブルブルブルと総身を慄わし、フーッと大きく息を吐きだすと、いつかすっかり黒雲重く垂れこめてしまっている川向こうの景色へ、勢《きお》い立っているいまの心の捌け場を探すもののよう目をやった。松浦様の大椎の木あたり、ようやく迫ってきている暮色をいやが上にも暗いすさまじいものにして、はや大粒の雨、そこでは飛沫《しぶき》を立ててふりだしているかとおもわれる。
「オ、いい心持でひとりで喋っていたら、とんだ空合になってきてしまった。降《ば》れるな今夜は」
 降ることをばれる[#「ばれる」に傍点]と、仲間の符喋でいいながらスッと圓朝は立ち上がっていって欄干《てすり
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