頬が落ち込み、顔全体にいやあな[#「いやあな」に傍点]赤ちゃけた血が上り、一面の無精鬚の中に相変らず大きく盛り上がっている鼻ひとつ、まるで生きながらの墓標のように侘びしかった。
「……」
情けなさにたちまちククと含《こ》み上げてくるものがあった。じつはここへくる途中、青山の久保本まで大廻りして、あらかじめ女主人と下足番の爺やとから、発病前後のことを聞きただしてきたのだが、師匠の一家はいま聞きしに勝る惨憺たる体落《ていたらく》だった。少しもしらなかったが師匠は下座《げざ》のお仙という三十がらみの渋皮の剥けた女とねんごろになり、それを根が苦労知らずの嬢様育ちのお神さんはカーッと一途に腹立てて、実家へかえっていってしまった。ところがそれを聞くと今度は下座のお仙が、お神さんが、でていっておしまいなすったあとへ、ヌケヌケと私が直るなんてとんでもない、お神さんにすまないから私もお暇をいただきますと、どんどん暇をとり、手切れをもらって別れていってしまった。隠然とした長老とはいえ、もう派手な人気もなし、大した先々も望めないと見てとって要領のいいお仙は、手廻しよく見切りをつけていってしまったものらしか
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