い、抱きしめ合って、早春《はる》の夜更けのこの路上、いつ迄もいつ迄も悲しみ、嘆き、泣きじゃくり合ってはいるのだった。
 星が流れて、いつか雪風が。あかあかと灯の洩れている楽屋障子の彼方からはまた憎々しい高笑いが、流れてきた。


     五

 忘れているだろうか、私は師恩を。
 翌朝、すみだ川を前にした部屋で、トックリと自分の胸へ手を当てて圓朝は、考えてみた。
 ……昨夜のことをおもうとき、圓朝の心の中はドンヨリと重かった。水|温《ぬる》むといいたげないろをめっきり川面へただよわせてきているすみだ川の景色もきょうばかりは曇り日のよう暗く見えた。ホンノリとした青空さえが、果てしらぬ灰いろの帳《とば》りかと感じられた。
 この私の近ごろの「芸」のいろいろさまざまと小手の利くようになってきたこと、一にそれは師匠の薫陶のほかにはないではないか。
 雨降《あまふ》り風間《かざま》、しょっちゅうそればかり考えない日とてはない私ではないか。
 ほんとうに師匠なくして私にこうした「芸」の深さ苦しさ愉しさ、どうしてすべての秘密の分ろうよしが、あっただろう、それのみ心から感謝しているこの私ではないか。
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