ら端席のことは附《つけた》りで小勇の柳派入り一件かもしれない。でも、でも、それならば明らかに小勇が悪い。師匠の怒るのも無理はない。
 同時にそうした三遊派全体を踏み付けにした弟子をだしたのはこの自分の責任だ。打たれても蹴られても仕方がない、これは心から詫《あやま》ろう。
 そう覚悟を定めていたが一向に師匠のところからは呼びにくる気配もなかった。
 二日、三日、四日――日が経つにつれて、だんだん圓朝は小勇の存在を忘れてゆくようになった、満座の中で悪しざまに師匠が自分を罵ったということをさえ。やがて二つともフッツリともおもいださなくなってしまった。それほどもうそのころ日に夜に圓朝の周りを取り巻きだしていた人気の声々は高まってきていたのだったといえよう。
[#改丁]

[#ここから5字下げ、ページの左右中央に]
第四話 拾遺 芸憂芸喜

[#ここで字下げ終わり]
[#改丁]

     一




 その真打に。
 でも、やっぱりなかなかなれなかった、圓朝は。
「立浪の、寄るかと見えて」いつも空しく仇花と凋《しぼ》んでいってしまうことが仕方がなかった。
 そのたんび気を落とし、悲しみ、ヘタヘ
前へ 次へ
全268ページ中164ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 容 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング