ほど増しているのだろう、腐れかかった溝《どぶ》板を踏むたび、ザブザブ青水泥《あおみどろ》が溢れてきて、溝板の割れ目から豆粒ほどの青蛙がピョコピョコ飛び出してきた。
「阿母《おっか》さん、只今」
やっと破らずに戻ってきた番傘の雫を切って圓朝は、半分だけ閉めてある我が家の戸へ手を掛けた。
「お困りだったろう、次郎吉」
このごろすぐ眉間へ深い立皺の寄る、年よりはぐっと老《ふ》けた母親のおすみがオロオロしたような顔を見せて、土間まで迎えてきた。
その足許に、見馴れない男物の足駄がひとつ。
「オヤ阿母さんどなたかお客様」
いつにないことと圓朝は尋ねた。
「待っておいでなのだよ。お前がでてゆくとすぐおいでになって……」
そっと後を振り返って母親は、
「お前、ねえお前、あのお前の高座をお聴きになってね、お弟子にしてくれってお方なんだよ」
「エ」
思わずドキッと圓朝は奥をみつめた。
三
一年目。まる[#「まる」に傍点]一年目。
いまお詣りをすましてかえれば、自分のような若輩の高座を聴いて、弟子になりたいというものがきて待っていようとは……。
これぞこの上なき、初代様の
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