圓太は泳いでいた。
「イ、いけない」
プーッと泥臭い水を吐きだすと、ようやくのことで竹箒片手に池から這い上がってきた。一帳羅の黒紋付が見るかげもなくぐしょぐしょ[#「ぐしょぐしょ」に傍点]だった。ポタポタ青っぽい雫が落ちてきてきんぽうげ咲く草原を濡らした(ウルル、寒い)。
「アッハッハッハ」
にわかに聞き覚えのある大きな笑い声が、耳もとで起ってきた。
ギョッと見上げると師匠だった。暖かそうな黄八丈の丹前を着た師匠の圓生が、朱いろの日の中に朝酒で染めた頬をかがやかして、さも面白そうに笑って佇《た》っていた。
「い、いや[#「いや」に傍点]ですよ師匠冗談なすっちゃ」
怒りもやれず小圓太はいった。
「冗談はしねえ、本気にやった」
もう一度師匠は哄笑《たかわら》った。
「冗、冗……」
さすがに口を尖らかして、
「いやんなっちまうなほんとに師匠。こんなことよか早く稽古のほうをやっておくんなさいよ」
こう頼んだとき、
「すんだよもう」
キッパリ師匠はいい放った。
「エ」
思わず小圓太は訊き返した。
「すんだんだというんだよ、だから」
また同じことを師匠はいった。
「何がすんだん
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