い、オドオド小圓太が演りはじめるとたちまち昆布だか糸ッ屑だか分らなくなったし、鱈も饅頭もいっしょくた[#「いっしょくた」に傍点]になってしまった。いわんや骨を抜く仕草においておや。我ながらこの間抜々々した恰好、白痴《こけ》が虫歯を押さえている手付きにもさながらで、ほとほと自分がいやになってきた。とたんに、
「ダ、駄目だ!」
 その師匠の「ダ、駄目だ!」という声のピシーリ烈しい音のしたのとポーッと自分の右手の暖かく痺れてきてしまったのとがいっしょだった。
 と見るといつの間に握られていたのだろう師匠の手の二尺|指《ざし》が烈しくブルブル慄えていた。そうして、そうして、自分の右の手の甲がこんなにも堆く、紫いろに腫れ上がってしまっていた。間もなくズキズキ痛みだした、いやその痛いの何のって。
 いつ迄もいつ迄もその手の腫れは退かなかった。ばかりか、だんだん腫れ上がってきた、日一日と紫の痣の色濃きを加えてゆくとともに。
 もちろん、痛みも烈しく募った。
「どうおしだえ、お前その手を」
 とうとう母親の目にとまってしまったくらいだった。
「いいえ、いいえあの何でもないんです」
 あわててその手を袂
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