初代桂春団治研究
正岡容

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)哄笑《わら》ひ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)サツカリンを[#「サツカリンを」は底本では「サッカリンを」]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さん/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 御一新以後エスペラントと堕した江戸弁は東京の落語の面白さを半減せしめたが、上方には独自の陰影を有つ市井語が現代近くまで遺つてゐたから、此を自由に使駆し得た上方落語は、大へんに幸福であつた。さう云ふ意味のことを私は「上方落語・上方芝居噺」の研究に於て述べたが、その陰影満ち溢るる大阪弁へ、酸を、胡椒を、醤油を、味の素を、砂糖を、蜜を、味醂を、葛粉を、時としてサツカリンを[#「サツカリンを」は底本では「サッカリンを」]、クミチンキを、大胆奔放に投込んで、気随気儘の大阪弁の卓袱料理を創造した畸才縦横の料理人こそ、初代桂春団治であると云へよう。
 人間が擽られて笑ふところを、第一に脇の下であるとする、第二に足の裏であるとする、第三におへその
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