正直にまで写しだされているのである。で、それらの速記をたよりとして圓朝つくるところの諸作品を、以下あなた方とともに検討していこう。
「怪談牡丹燈籠」
「牡丹燈籠」は拙作『圓朝』の中でも記しておいたとおり、最も人口に膾炙《かいしゃ》された代表作である上に、「累ヶ淵」「皿山畸談」とともに今日のこっているものの最古の作品にかかっている。で、最初にこれを採り上げることとした。もっともこの速記本の上梓《じょうし》されたは明治十七年、作者四十六歳の砌《みぎり》であるから、すこんからん[#「すこんからん」に傍点]と派手に画面の大見得を切った芝居噺のころの構成とはよほど異なっていることだろう。もちろん、後年のほうが燻《いぶ》し銀のような渋さに磨きがかかり、恐らく一段も二段もよくなっているだろうにはちがいない(今日この速記を読んでいくと僅かに一ヶ所、後半の伴蔵が源次郎に啖呵を切るくだりで芝居噺をおもわせる口吻が感じられるが、その場合はむしろのこっているだけ作品としてはありがたくない場合であること、後述しよう)。
さてこの「牡丹燈籠」には春のやおぼろ(坪内逍遙博士)が絶讃の序文を寄せてい
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