いい旦那ができ、晩年すこぶる幸福と書いたのだが、そののち古川緑波君その他の話を総合してみるとやはり、それはまちがいでどうやら晩年は悲惨だったらしい。私は衷心、この説の誤聞であることを祈ってやまないが、それにしても彼が死んでからもう何年になることだろう。歴史は繰り返す。私は最前からこの短い文章の中で二度もこの言葉を記したけれど、わが日本太郎のごとき存在だけはついにそののち今日まで寄席の歴史の中へ再びとは生まれてこなかった。恐らく今後悠久にああしたよきげてものは、再生してこないのではなかろうか。
底本:「寄席囃子 正岡容寄席随筆集」河出文庫、河出書房新社
2007(平成19)年9月20日初版発行
底本の親本:「艶色落語講談鑑賞」あまとりあ社
1952(昭和27)年12月刊
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年1月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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