う。
三
明治落語界を風靡した滑稽舞踊「郭巨の釜掘り」の一節に、
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※[#歌記号、1−3−28]吉原おいらん手紙は書くけど表にゃ出られぬバー
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という文句があったが、いやそんなに古く溯るまでもない。大正大震災後に流行した現代映画、『籠の鳥』の主題歌でさえ、
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※[#歌記号、1−3−28]あなたの呼ぶ声忘れはせぬが 出るに出られぬ籠の鳥
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と歌っていた。外出するおいらんに、小母さん(やり手)が従いて看視していた風景は、戦争激化以前にはよく町で見られた。
ちょうど、それの正反対のあり方をしているのが、今日のパレスの彼女たちなのであると、原さんは言うのだった。
まず雇用関係でないから、いつ外出しようと、いつ客とどこへ出かけようと、いつ親元へ行ってこようと、いつ休もうと、いっさいが自由、従って公休日はない。すなわち公休日の不要なほど、自由に振る舞っていられるというのである。
従って昼の時間がまったく楽なため、パレスの生活をアルバイトとして、女子大を出たもの、某音楽学校を卒業したも
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