あとこせ」に傍点]を旗印しにはでに演つたものが、座敷芸の場合には、「深川」「坊さま二人で」の件りなどさへ、たゝみ一畳と動かずにさし[#「さし」に傍点]で二人十分に踊り切つたものだ。客席で立つほう間の踊りは、その辺に料理皿小ばちもある関係の畳半畳とは動かずに済む身ぶり足どりでなければならなかつたと、桜川長寿が話してゐた。
小うた振りも「初出」などは足もとさへたてまへのはり[#「はり」に傍点]木の上を踏む心で行けば、三尺四方以内で――たてに深く――踊り切れるものと聞いた。これはやまと屋のいつたことである。
諸芸の風も求心的な深みや味を主意としたもの(江戸ぶり)は衰滅して、遠心的に大きく動かうとする風(西洋風)が専ら行はれるものであらう。それが良く大きく行く場合はいゝが、やゝもすると内容はバサけ勝ちになり、味の浅さに対して、概して近年人が一般に鈍感になつたことは、否めないやうである。
三、道中「上り」「下り」の唄
お江戸日本橋の道中うたは、本文通り日本橋を朝明けの七ツ(四時)に立つて、高輪へ来てちやうちん[#「ちやうちん」に傍点]の火を消す。それから段々と西へ「京」へ着
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