つとなつてゐる。
 一ころ寄席の芸で、はなしかの雷門助六が立つて踊る高座のお江戸日本橋は、「桑名の殿様」と共に、一芸のものだつた。派手な円遊の「綱は上意」や、飄逸喜ぶべき三好の「柳」とは違つて、妙な言葉ながら「本格的」ともいふべき、そのくせ動きをほとんど座布団のたけ幅一尺外へは出さない、内バ[#「内バ」に傍点]の足どりで、槍をふるつて見せる、と、大道狭しと行く大名行列もそこにはうふつとするのである。――つまりほう間[#「ほう間」に傍点]の座敷芸に演じたところを、高座に移した姿であつた。
 いはゞ踊りを盆栽に仕生けたものともいへるだらう。――今日ではほとんど見られない。
 序でだから書くけれども、近年「小うた」といはれるものに必ず振りがついて、特に小うた振りと称する小舞が行はれるが、小座敷あるひは小舞台の芸なるに拘らず、例へばその「こよひは雨」「心でとめて」など、新ものゝ「小猿七之助」等申すにおよばず、何れも動きをかへつて派手に大きくとるのは、大きくなければ絵でないと思つてゐる文展の出品画のやうにをかしなことであつた。かつぽれの梅坊主なども、戸外では立てものゝ相当大きなやあとこせ[#「や
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