少年の食物
木村荘八
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)結《ゆわ》かれて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年十月)
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私は初めて絵を見たのは何が最初か、一寸おぼえていません。多分好んで見たのはポンチ絵だったろうと思います。窓から乞食が麦わらで室内の人の飲みものを飲む絵だとか、団十郎が尻に帆をかけて大阪へ行く? 絵などおぼえています。先是、私の家の二階の広間には大きな墨絵の龍を描いた額(三間幅位のもの)がありましたが、好きではありませんでした。私の室には何にも額はありませんでしたが、兄キの室へ行くと、そこのはいってふり向いた上の壁のところには――あれはどう云う性質のものだったろう? 何しろ石版画には相違ない。或いは、当時の市会議員の像かも知れぬ? そう云う、沢山に人のいる、それが各々小判形の中に、ベタ一面人のいる額がかかっていました。紙が黄ろくくすんでいたことと、星亨がいたこと、その顔は今もおぼえています。中に私の父もいるのでそれでヘンに好意を持っていた額です。――之等が私にとって最初の、座
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