の芝居を見たと云うので、そのハムレットの場面を絵に描きました。――一体家兄は初めは私よりずっと絵がうまかったので度々絵はかいていた。私は丸で頭が上がらなかった。然し此度のハムレット程まとまった大作は、したことがありませんでした。
私はそれを痛く感心して、殊に画面に沢山円柱があって、靴下からももまで足の形の通りぴったりと付いた服を着ている、その足の人が沢山並んでいます。之を実に気に入りました。それ迄、外国の絵では見たこともあるが、日本人で描いたのは、先ず見たことがない。それを兄キがずんずん描いているので、自分は小学校だ。中学校へ行くと、伊藤さんや兄キのようにあんな風に絵が描けるようになるのか、いいなあと思いました。兄キはその絵を然し中止したようだったが。――定めしこんな事をかいたら、兄キはいやがるだろう。僕には只忘れられぬことである。
私は毎号出る度毎に『少年世界』と、たしか『少年』もその頃発刊されたと思う、それと、小波さんの『世界お伽噺』と、両国に片桐と云う気持のいいおかみさんの本屋があって、そこからツケで買いました。『太陽』の表紙が如何にも大人々々していて尊敬心を払ったおぼえがあ
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