たと思ふ。同時にその風袋をもつて画壇に臨んだ。
初期といふものはそのまゝでは誰しもさだかならぬものだが、しかしこれを三つ児の魂ともいふか、その人の「筋」は必ずその人の初期を見ると、現れてゐる。これがコハイし、面白いものである。――ぼくのいひたいのは、小杉さんの「初期」を見るといふと、その漫画に依らず、さしゑに依らず……何れも、絵に装飾才能の分子が十の中八までを濃厚に占めてゐるといふこと、言葉を替へていへば、形似描写風の仕事よりも象徴風のカタチが絵の中に著しく強いことである。
小杉さんはさういふ仕事――この「仕事」とする字の意味は Work よりも Task の分子の多いものとして良い――をする一方に、これは Work または Study の意味としての、絵の正則な勉強を、片時も撓まなかつた。これは仕事のカタチからいへば、小杉さんの得意な象徴装飾風なるよりはどつちかと云ふと苦手の、形似的写実風のものに絵を導く過程だつたらう。小杉さんとしてこれは楽な或は楽しい画学であるよりも、苦しい勉学であつた方が多かつた過程に違ひない。
後に外国へ行つてからも、欧洲風のアブラ絵が日本の、――小杉未
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