家や実業方面ではどういふところか知りませんが、俳優でいへば林長三郎、村田嘉久子等と同年の巳歳で、花柳章太郎が一つ歳下、中村時蔵が二つ歳下です。ぼく達の巳歳からもう一廻り上の巳歳が小杉さんで(放庵子)、小杉さんの更にもう一廻り上の巳歳がアンリ・マチスの歳になります。
 話がもどります。フューザン会といひ生活社といつても、今では画壇の昔語りで、若い人々には誰がどうしたことかわからないでせう。それ等の内訳は此の書きものゝ範囲外となるからこゝには記しませんが、フューザン会はその頃銀座にあつた読売新聞社の楼上で開かれました。それからして場所といひ名といひ、今の人達にはヘンに思はれることでせう。生活社――この同人は、前にものべたやうに、故岡本帰一、高村光太郎、岸田劉生、小生の四人。――は神田三崎町のヴィナス倶楽部といふところで開かれたと云つた。この家なんか正に文字通り方丈記の「世の中にある人と住家とまたかくの如し。玉しきの都の中に棟を並べ甍を争へる云々……これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家は稀なり」。今行つて見ても全然何処にその家が在つたかわかりません。その帰朝展覧会が同じ会場で開かれたものです
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