管理させてある「御新さん」達に、子供が生れると、男女共、これに番号の名をつけたものです。おろく、おくめ、おとめ、士女子、とじ子、おとむ、おとな、荘五、荘六、荘七、荘八、荘九、荘十、荘十一、荘十二、荘十三、といふわけだ。
ぼくのきやうだい[#「きやうだい」に傍点]は、そんなわけで、皆合はせると、三十人以上ありました。
ぼくはしかし平素、その三十人大家族と常に顔を合はせたといふわけではなく、子供達はそれぞれの母と一緒に、それぞれの店に居るわけで、従つてぼくはぼくの一つ腹の兄妹達三人と共に、両国の家に育つたものです。「父」こそ日頃親しまないが、それにしても無いわけでなし、母や祖母とは朝夕親しく、身近く健在で、それに金は有り、商売は陽気なり、雇人は大勢居ます。春は正月から花にかけていつも浮きますし、夏は歌の文句ではないが大川の花火だ。秋は新松《しんまつ》だ、冬は酉のまちだ、歳の市だ……で、いつも家中ごつた返してゐます。それで僕の少年時代の記憶といへば、店は始終忙しいから、大仲好しの祖母と、中の間といふ奥の仏壇の有る居間にすつこんで、この祖母がチビのぼくをつかまへて胴を膝の横に落した爪弾きで
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