岸田劉生の日本画
木村荘八
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これが森田恒友さんについての書きものならば、日本画とはいはずに水墨とするところであるが、岸田は「水墨」が似合ひでない。のみならず、岸田当人も絹紙に墨の仕事を特別の名で呼んだことがなく、たゞ日本画々々々といふ。森田さん風にこれを水墨といへば、これはまた言外に文人画の意味をこめてゐるやうである。その文人画の意味も岸田の場合には特別の匂ひにならない。
八大山人風のモティフや石濤の仕事あたりを志して――仕事あたりを志して、といふのが、岸田は常に古人の何かしらの仕事を目ざし、その風を志して、仕事を進めたものだつた。それが岸田の作風の一つであつた。これについては後に述べるだらう――墨画の山水などを岸田も描いたことがあつた。その場合には筆を行る心意気もまた文人画風であつたらうが、総じていふに、岸田は文人画境地の画家ではなかつた
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