る人の子だわ。自分の子だと思ふ人のものだわ。
町田 何だよ?
お秋 いゝえ、何でも無いわ。
初子 もし赤ん坊が生れて大きくなつたら、さう聞かしてやるわ。秋ちやんのことを――。
お秋 そんな事、ごめんよ。私。――初ちやん、これからも、ねえ、――私、何と言つたらいゝだらう。チヨイと言ひ方がわからないんだけど、――地びた[#「びた」に傍点]ばつかり見ちやいけないのよ。いつも地獄の方ばかり見てはいけないわ。――世の中には面白い事はいくらもあるものよ。――杉山さんなぞを怖がる気持が此方にあるから、おどかされもするんだわ。
初子 わかつたわ、秋ちやん、わかつたわ。
お秋 ではもうお帰り、早く帰つて頂戴。――そして、初ちやん、これから、どんな事があつても、町田さんを離れるんぢやないのよ。此処へ戻つて来ちやいけないのよ。私を思ひ出してはいけないのよ。――ね、こんな所に来ちやいけないのよ。杉山はもう大丈夫だわ。
弟 畜生! こんな所に来ちやいけないんだ。誰も来ちやいけないんだ。これから、誰一人だつて来ちやいけないんだ。
町田 どうしたんだい?
お秋 なあに、あれは何でも無いわ。――さあ、早く家へ帰つて頂
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