初子 恵ちやん、怒らないで頂戴。私がいけない女なのよ。いくぢの無い女なんだわ。
弟 だつて、悪いなあ、初ちやんぢや無いんだ。奴等が間違つてゐるんだ。――俺にもハツキリとはわからないんだけど、だけど、悪いなあ奴等なんだ。奴等が悪いんだ。おぼえてゐるがいゝんだ。明日になつたら、あさつてになつたら、その次の日になつたら、又その次の日になつたら、その時にや、――どうするかおぼえてゐるがいゝんだ。
初子 沢ちやんはどうしてゐるの?
弟 まだ寝てゐる。まだ寝てゐる。くたびれてゐるんだよ。
初子 病気だつてね?
弟 病気だ。――あたりまへだ。病気になるなあ、あたりまへだ。こゝに居れば――。(足音――お秋が入つて来る)
お秋 初ちやん。
初子 誰か来たの?
お秋 杉山が来てゐるわ。
初子 一人で?
お秋 さうだわ。
初子 そして、どうだつて言ふの?
お秋 お前さん、私の言ふ通りにするのね?
初子 えゝ、それは。
お秋 するわねえ?
初子 するわ。何でもするわ。
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お秋再び降りて行く。沢子入つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
初子 あゝ、沢ちやん!
沢子 初ちやん!
初子 あんた
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