んまさんになることよ。そしたら姉さんだつてこんな所にゐないでもよくなるわねえ。
弟 世間の奴は、みんな畜生だ。俺と姉さんを置いてきぼりにしたおやぢ[#「おやぢ」に傍点]とおふくろ[#「おふくろ」に傍点]が第一畜生だよ。畜生!畜生!
沢子 そんな、それは恵ちやんにはまだ解らないわ。どんな訳があつたかも知れない。――私にだつて国には子がゐる。――もう三つになつてゐるわ。それに母親がこんななんだから。(寂しく笑ふ)
弟 何と言ふ名だよ?
沢子 忘れてしまつたわ。――いゝえ、忘れてしまはうとしてゐるの。だから、言はないで頂戴もう――。
弟 逢ひたいかい?
沢子 (寂しく笑つて)無いわ。いゝえ、逢ひたく無いわ。――逢はない方がいいわ。
弟 その子も、俺の様に封筒張りをしてゐるね?
沢子 さあね、しかしまだそんな事出来ないから――。
弟 いゝや、きつと封筒を張つてるよ。
[#ここから2字下げ]
短い間
[#ここで字下げ終わり]
沢子 しかし恵ちやんは、秋ちやんの様にいゝ姉さんを持つて、まだ、どんなに仕合せだか解らない。
弟 ――姉さんは夜おそくなつて一人で泣いてゐる事があるよ。隠してゐるんだけど、
前へ
次へ
全81ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング