さんがお前の所に寝るなら、少し蒲団を分けておやり。
弟 いゝとも、だけど変だなあ。あゝ寝るよ。姉さんも早くおやすみ。(階段の方へゴトゴト行く)姉さん、姉さんはあの人に惚れてゐるよ。そして、さうで無いふりをしてゐるんだ。俺知つてゐるんだ。(二階へ消える)
[#ここから2字下げ]
お秋煙草を吸ふ。――吸ひ止めてヂツとなり、テーブルに顔を伏せ、急にガツクリして声を出さずに泣く。永い間。隅に立つた阪井がお秋を見詰めてゐる。時計が十二時を打つ。入口の扉が開いて、神経質らしい洋服の町田が少しキヨトキヨトしながら入つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 おや、あんた町田さんぢやなくつて!
町田 あ、お秋さん、今晩は――(四辺を見廻す)あの、つい来よう来ようと思つてゐながら――。
お秋 ――。
町田 あの時のお礼もロクロク言はずにゐたし、来なくちやいけないと思つちやゐたんだが、ね――。
お秋 それなら、もういゝのよ。お礼なんて、そんな、私は自分のしたいことをしただけなんだから、それに、あんた達、こんな所へ来ない方がいゝのよ。
町田 いや、さう言はれると――。どうも、いろいろ忙しいし、それで――。

前へ 次へ
全81ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング