つたつて今の俺にや。――今夜此処へ泊めて貰ひたいと思つてゐるんだ。合宿へは行きたくねえから。
お秋 えゝ、それはいゝけど。
阪井 なに、ホンの寝るだけだ。商売の邪魔はしない。恵ちやんの部屋だつていゝ。
お秋 いゝのよ、そんなこと、居たいだけ居ていゝわ。
阪井 恵ちやんはまだ帰らないのか?
お秋 えゝ、まだ。
阪井 ほんとにお前も大変だなあ。
お秋 (いろんな意味の怒りを一緒にして顔を引きしめて)なんなの?
阪井 え? 何んだよ? どうしたんだよ?(短い間――お秋はその間に元の様になる)
[#ここから2字下げ]
阪井二階へ行かうとして立上る。
お秋は阪井を見る。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 あんたの死んだ妹さんは、あんたをうらんで死んだ。睨んで死んだわね。
阪井 ――?
[#ここから2字下げ]
暫く見合つたまゝ立つてゐたが、阪井の方から階段口の方へ歩き出す。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――


(三)[#「(三)」は縦中横] 同じ場所


[#ここから2字下げ]
夜更。
客は去つてしまつてガランとしてゐる。四十に近い女将は何かブツブツ言ひながら、店と奥との間
前へ 次へ
全81ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング