おかみさん。それは、出ろと言はれれば明日からでも――。
声 何を言つてゐるんだよ、私や無理にとは言つてゐないんですよ。だけどさ、いくら何だつて私んとこだつて、それぞれの都合があるんだから――。
沢子 えゝ。わかつてゐますわ。
声 だから、なりたけ[#「なりたけ」に傍点]早いとこ快くなつてくれなくつちや――。
沢子 えゝ。おかみさん、なんなら、ぢや、私、今晩からだつて、私、貰ひますから。
声 いえさ、私や何も催促してゐるんぢや無いんだよ。初子はあんな事になるし、秋ちやん一人ぢや手がたりないから、つい、言ふんだよ。――だからさ、別に急ぎやしないやね、とにかく早く快くなつておくれよ。(降りて行く足音)
沢子 えゝ、――えゝ。
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短い間
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弟 畜生! 畜生が!(低い呪ふ様な声)
沢子 恵ちやん。
弟 畜生が! とにかくだつて! 急ぎやしないと言やあがるんだ。無理はさせないと言やがるんだ。――畜生が! 無理をさせようとしてゐるんだ。せき立てゝゐるんぢや無いか。
沢子 何を言つてゐるのよ?
弟 沢ちやん、お前、明日の晩になれば病気がよくなるのかい?
沢
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