ら2字下げ]
間――お秋は今秦の言つたことをヂーッと考へこんでゐる。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 (気を変へて)沢ちやん、あんた、泣いてるんぢや無い?
沢子 ――いゝえ。
お秋 (薬包を見て)これ何?
沢子 新さんが持つて来て呉れたのよ。
お秋 薬なのね。――私にもようく解るわ。本当に、あんたも新さんも――。(語調を変へて)馬鹿だよ。
沢子 秋ちやん、私や、私や、もう――。
お秋 ほら、ほら、もう始まつた。私《わたし》や聞かないわよ。おのろけなら、もう沢山。
沢子 ――秋ちやん、――あんたは私《あたし》には、本当の姉さんの様に思へる。秋ちやんが居なかつたら私、もうとつくに死んでしまつてゐるわ。
お秋 (わざと嘲る様に)何を馬鹿々々しい! 私は、そんな、愁歎場は大嫌ひだわよ。いゝ加減そんなメソメソした事は聞き飽きてよ。初ちやんの時にも散々《さんざ》つぱら見せつけられてゐる上にさ――。
沢子 初ちやんだつて、そりや、秋ちやんをお母さんの様に頼りにしてゐたわ。
お秋 まあま、お母さんだなんて、可哀さうに私をいくつだと思つてゐるの。
沢子 だつて、そうだわ。秋ちやんがあんなに骨を折つてあげ
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