見えないもんだから、ひがみ[#「ひがみ」に傍点]もあるのよ。
秦 眼は両方ともまるで見えないの?
お秋 えゝ。――見えないと言つても、眼はあんなに開いてゐるから、はた[#「はた」に傍点]から見ると盲だとは思はれない位よ。しかし時に依ると、物の形だけ極くボンヤリと見える時もあると言つてゐるんだけど、どうだか。
沢子 そんな事を言つて秋ちやんに安心させたがつてゐるのよ。――姉さんのためなら、どんな事でも、何でもする、と言つてたわ。
お秋 (寂しさを押しかくし笑つて)そんな事を言つたつて、盲の子供に何が出来るもんか。
秦 先に工場へ行つてたつてねえ?
お秋 えゝ、その頃はよかつたんだけど、生れつき弱い奴だし、それに、何ですか、工場であんまり細い仕事をさせられて眼を悪くしちやつてね。――しかしま、もう後二年もすれば相当のあんま[#「あんま」に傍点]さんになるつて言ふんだから。
沢子 さうなつたら、いゝわね。秋ちやんもさうなれば。
お秋 どうだか。あぶないもんだわ。
沢子 秋ちやんも、それから恵ちやんも、仕合せだわねえ。――私なんざ――。
お秋 また? 又、そんなに泣き出すの。泣虫――。私達姉弟
前へ
次へ
全81ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング