っただなあ。そん時から、二十六日が来ると、その鈴さげて――鈴は、その二番目の息子が出征する時にオスワさんに武運長久のお詣りに行って受けて来た魔よけの鈴でね、婆さまにカタミに置いて行ったもんだつう。なんしろ、へえ、そん時以来、こうしてまあ、どっか[#「どっか」は底本では「どつか」]、まちがっちゃっただねえ。
そめ まちがっちゃ、おりませんです。チャンとこうしてハガキが二枚も参っておりやすから――
農夫 無理もねえ、無理もねえ、親一人子一人じゃねえか、無理ねえとも! 全体だなあ、ロシヤと云う国は、どうた国だな? そりゃ、こっちは[#「こっちは」は底本では「こつちは」]戦争に負けて捕虜になっただから、勝手を云えねえのはわかっているけどよ、いいかげん働かしたら、帰すだけは帰してくれたら、どんなもんだ――え? 三年も四年もつらまえて置いといて、どうする量見だ、いってえ? それに、なんだっつうじゃ[#「なんだっつうじゃ」は底本では「なんだっうじゃ」]ないかね、ロシヤでは、百姓だとか職工なんぞが大事にされて、つまり百姓なんぞの味方と云うか、そうた国がらだつうじゃないか。それがお前、こっちの百姓の子を
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