した瞬間にギクンとして、二三歩とびさがり、恐ろしいものを見るように織子の姿を見ていたが、やがて顔をふせて深々とお辞儀をして、織子の前を遠まわりをするような足どりで、わきに寄る)
省三 ……(さきほどから噛みつくような眼を光らして須永を睨んでいたのが、だしぬけに)そうだよ! 何が善で何が悪なんだ! 須永君、君がその男といっしょに生きておれなかったの、わかるよ! おれたちは、おれたちを押しつぶそうとしている奴等を、しめ殺さないでは、生きて行けないんだ!
須永 いや、そんな……(省三の激しい視線を受けかね、助けを乞うように次の浮山を見る)
浮山 ……だけど、田舎にお母さんや弟さんも有ると言うんだから、この――
須永 …………(恥じて頭を垂れる)
省三 だけど、それをそういう形で解決しようとするのは間違いだ! それはホントの解決にはならん! 僕の部屋へ来てくれ須永君! 話し合って見よう! (進み出して須永の腕を取りそうにする)
須永 ……(その手をソッとよけて、桃子の前に行き、低い声で)モモコさん。
モモ ……(ユックリした視線で、須永の方を見て)須永さん、又、塔に登らない? (そしてフルート
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