迎えるように須永を見迎える。ふだんのままであるのは桃子だけ。
須永は桃子に視線を向けて入って来るが、一同がだまりこんで並んでいるので少し気押され、いぶかるような、はにかむような態度で、ソロソロ歩き、並んだ順にユックリと眼を移して行く。
舟木、織子、省三、浮山、桃子、柳子、若宮、房代のそれぞれが、須永から見られて次々と各人各様の表情と態度を示す)
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舟木 …………(眼をすえてジッと須永を見る。それはハッキリと医者の眼である)
須永 ……(舟木の眼から引きとめられてしばらくそれを見ていてから、薄く微笑して)ええ。すこし頭が痛いんです。
舟木 ……須永君。
須永 舟木さん、あなたはお医者です。あなたの考えていらっしゃる事はわかります。……たしかに僕は病気かもしれません。
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(そう言って、一歩進んで織子を見る)
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織子 …………(ああと口の中で言い、同時に膝まずき、須永に向って頭を垂れ、握りしめた両手をアゴの所に持って来て、唇をふるわせつつ何かささやきはじめる)
須永 …………(ポカンと見ていたが、相手が祈っていることを理解
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