した。……そうなんだ、あなたも奥さんを殺したんだ。……そいで生きているんです。同じです。……(全く熱のこもらないウワゴトのような調子になって行く。私は冷たい汗を垂らし、手はほとんど虚空をつかまんばかりに握りしめられている)
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(そこへヒョイとフルートの音が起る。
次ぎの室の人々の中に立った桃子が、フルートの吹き口を唇に持って行っている姿。その細い腰をしっかりと抱いた柳子の白い手が、ハッキリ遠くから見えるほどブルブルふるえている。……
須永がフルートの音を耳にとめ、椅子を立ってユックリそちらへ行き、板戸の前にチョッと立ってから、板戸をスッと開けて、そこの八人を認め、それから私の方を振返って見てから、ユックリと次ぎの室へ入って行く。眼は桃子を見ている。私の室は暗くなる)
[#ここで字下げ終わり]
12[#「12」は縦中横] 次ぎの室
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(そこに居る八人の人たちは、それまで板戸の隙間から洩れる光に沿って立っていたので、知らぬ間に、やや半円を描いた一列に並んでいる。それが一種の恐怖のようなもので動けなくなって、墓場から起き出して来た者を
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