いる)……いつ死んでもいいんです、これで。(とポケットに触ってみせる)あなたに撃ってもらってもいいんです。
私 須永君。……(ガタガタと手がふるえている)
須永 弱ったなあ。……あのう、御迷惑なら僕あ出て行きます。ですから……いえ、あなたとモモコさんに逢いたかったもんですから。……あなたの事を僕はズーッと尊敬していました。たった一人、あなただけを尊敬してたんです。それが、今夜来てあなたを見たら、なんですか、まるきり、尊敬しなくなっちゃってる自分に気が附きました。どう言うのか、僕にもわかりません。尊敬じゃない、もう。……軽蔑しちまってるんです。いえ、軽蔑と言っちゃ、なんですけど、その、あわれなような気がします。あなたが、なんか可哀そうなような――そうです。そいで、やっぱしあなたが好きです。(女のような微笑)……あなたには、わかっているんだ。あなたは、わからないと自分で思ってるけど、そう言っているけど、ホントは、あなたは、僕のことは、わかってるんですよ。……あなたも死にかけているんだ。だから、ホントにあなたは生きているんです。あなたは奥さんを亡くしてるんです。僕はあい子を亡くしたんです。殺
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