られないで黙っていますと、実に女々しい不愉快きわまる、今後来るのはことわる、そう言ってニヤニヤして、テーブルの引出しからピストル取り出して、又来たら、これで射殺すると、僕にねらいを附けるような恰好をして、又笑いました。……それ見ていて僕は、とても悲しくなりました。寂しい……とても、悲しくて、泣きたくなったんです。そいで、もう帰りたまいと言って向うを向いてしまったんです。その後姿を見ていて僕は、この人と自分とは、いっしょに生きてはおれないと言う気がヒョッとしたんです。一瞬間もいっしょの空気を呼吸して……いや、気がしたんじゃなくて、その時、一刻もいっしょに生きてはおれなかったんです。そいで……僕は自分のバンドをはずし、後から行って、首をしめた、ようです、ハッキリおぼえていません。(自分の上衣のすそをめくって、ズボンのバンドの所を覗く。バンドは無い)……非常に簡単に、あの、身体がやわらかになって――死んだんですか、じゃ?
私 …………(答え得ない。ただ微かにうなずく)
須永 ……そいから外へ出て来たんです。出る時にお母さんが変な顔をして出て来たので、なんか僕は言おうとしたら、ピストルが鳴りま
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