よくわかりません。……しかし、あい子にはどこか、そういう性質がありました。こいつは、気ちがいじゃないだろうかと思った事が、一二度あります。そういう意味では僕には、どこか、わかるんです。じかにあい子を、よく知らないあなたには、わからんと思います。
私 ……。しかし、あい子さんのお父さんやお母さんや米屋をなにしたのは、どう言う――?
須永 それは僕にもよくわかりません。……あい子を殺してから、僕も生きてはおれないもんですから、薬をのんだんですけど、たくさん飲みすぎて吐いたりしてグズグズしてたんです。……そいでその間、毎日あい子の内へ行ってたんです。なんか、そこにまだ、あい子が居るような気がして。……それに、あい子のお母さんが、あい子にとても似てるもんで、なつかしいような気がして。そいで、そのお母さんも僕の顔を見るのが、うれしいようなもんで……もっとも、時々、あい子だけ一人で死なしといて、あんたが殺したくせに、いつまでもどうして生きている、どうして後を追って死んで、つまり心中してくれないんだ、と言ったような――いえ、口に出して言やあしないんですけど、そんなような眼をして僕を見ました。……それ
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