永 僕にもわかりませんでした。次ぎの日には山で一緒になにする事になっているのに、どうして自分だけ、僕を残して……それ、いろいろ考えました。……やっぱり、僕が殺したんです。
私 ふうむ。……
須永 聞いてくれますか?
私 聞かしてくれ。
須永 僕とあい子は去年から仲良くなっていました。あい子は僕以外の男性はもう全く考えられないと言います。僕もそうでした。しかし肉体関係は無かったんです。接吻だけは、六度ばかりしました。しかしそれ以上のなにはイヤダと、あい子は言うんです。僕はあい子の身体も欲しいので、要求すると、泣いて、そうしないでくれと頼むのです。そいで、そのままでズーッと来て、そして一緒に死のうと言うことにして、ですから、僕あ、二人で死ぬ前に一晩だけ過して、ホントの夫婦になって、そいで死のうと言ったんです。あい子もそれを承知して、行くことになって、そいでその前の晩に一人で死んじゃったんです。……その、ホントの夫婦になると言う事、つまり肉体関係が、あい子にはイヤだったらしいんです。
私 しかし、そのために死ぬというほどの――?
須永 僕もそう思ったんです。今でも、そんな事があるだろうかと、
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