)……迷惑と言いますと?
私 だって君は、三人も人を……なにしたんだぜ?
須永 え?
私 つまり……殺した。
須永 三人じゃありません。僕が殺したのは一人です。
私 ……だって、その、あい子さんの父親と母と米屋の青年と。
須永 ……すると米屋なんですか、あれは?
私 ……[#「 ……」は底本では「……」]やっぱりそうだろ?
須永 ……(考えていたが)それなら四人です。いや……やっぱり一人です。
私 三人とハッキリ書いてある。
須永 いえ、一人です。でなければ四人です。
私 すると……ほかに……その一人と言うのは?
須永 あい子です。
私 だって、あい子さんは病気で亡くなったんだろう?
須永 いや、僕が殺しました。……殺したのは僕です。
私 ……よくわかるように話してくれるわけには行かないかな?
須永 ……あい子と僕は山中湖へ行って一緒に死ぬことになっていたんです。そう約束して、薬も手に入れ、金も作り、汽車の切符も買ってその次ぎの日の朝出かけることになっていたんです。その晩おそく別れて、朝になったら、あい子は一人で薬をのんで自殺してたんです。
私 そうか。……でも、しかし、どう言う?

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