あなたは、嘘だけはつかれないから、そいで、なんとなくツイお目にかかりに来るんです。
私 そう、そりゃなんだけど――私の言ってるのは今日のことさ。特に今夜はどうして此処に来る気になったかって言う――?
須永 いけなかったでしょうか?
私 いや、いけなかないけど――
須永 それにモモコさんを見たくなって。
私 モモコ? どうして?
須永 好きなんです。
私 うむ。……君、ピストル、持ってるの?
須永 え?
私 持っているんだろう?
須永 ……(私の顔を見ていたが、普通の調子で)ええ持っています。(手紙でも出すような素直さで、右手を内ポケットに入れる)
私 (それをとめて)いや、いいよ出さないでも。……だからさ、その事を――?
須永 え?
私 ……夕刊に出ている、君のことが。
須永 そうですか?
私 知らないのか?
須永 ええ。
私 ……どうして特に此処に来たのかと言うのは、それさ。私は君を好きだから別に迷惑だとは思わない。しかし、君の方としては、それを考えるのが自然だったと思うんだがね。私や、そいからこの家に住んでいる人たちに迷惑がかかると思わなかったの?
須永 (単純ないぶかしそうな顔で
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