たから、今夜ももうちょっとすると出るわ。
須永 お月さんの出たのが、しかしどうしてわかるモモちゃんに?
モモ わかるわ。(額のわきの方を指でおさえて)このへんがボーッと明るくなる。
須永 ……モモコさん、裸になって僕に見せてくんないかな?
モモ 裸? あたしが?
須永 うん。着物をすっかりぬいで。
モモ (笑って)それをベロンと手の先にぶらさげて?
須永 そんな――ホントに見たいんだ。
モモ どうして?
須永 どうしてだか。とっても見たい。
モモ カマキリみたいよ、あたしの身体なんか。
須永 見せてくんないかなあ。
モモ はずかしわ。
須永 ねえ、お願い!
モモ どうしてそんなこと言うの? 須永さん、今日は変よ。いつもと、まるでちがう。
須永 どんなふうにちがうの?
モモ ユウレイみたい。
須永 ……馬鹿言ってらあ。
モモ 須永さん、三階の先生んとこに、何を教わりに来るの?
須永 うん、芝居のことやなんか――いや、もっと大事な、いろんな。
モモ えらいの、あの先生?
須永 えらい。そいで、こわい。……いや、かった。今日来て見たら、えらくも、こわくもない。なんだか、かわいそうになった。
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