て、そばに寄って行き)織子、洗面器に水を。(片膝を突いて、手首を握る。織子小走りに階下へ去る)……
若宮 テンカンでしょう?
浮山 注射かなんか、あの――?
舟木 ……(柳子の目ぶたを開いて覗いていたが)いや、それには及ばんでしょう。テンカンと言うより、あんまり昂奮しすぎてる所へ、今の事で――(浮山に)それに、コカイン相当にやってるんでしょう?
浮山 ええまあ。近頃では、その上に、睡眠剤をのんだり、いろいろで――
舟木 いかんなあ。……そこのソファの上に寝せとくか。(言われて房代、省三、浮山の三人が柳子を抱えあげて、ソファに寝せる……)こういうタチの人は、下手をすると、おかしくなる。
若宮 気が狂うんですか?
舟木 いや、そういうわけでもありませんがね。
若宮 そう言えば、此処の亡くなった大旦那も、ひと頃、少し変だったとかってね。あの高い塔をおっ立てたりしたのなんかも、まあ、普通じゃない。
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(そこへ織子が急いで水の入った洗面器をかかえて入って来る。それをソファの下に置き、浮かしたタオルをしぼって、柳子の額にソッとのせる。……柳子、意識を失ったまま身体をビクッとさ
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