そいで、外へ出ようとした所へ来合わせた米屋の配達人を射殺して逃走し、目下捜査中とある。調べによると、死んだ娘の恋人だった須永孝が犯人に十が十、まちがいないと、チャンと書いてある。どうも――。
舟木 ふむ。……(私に)ほんとですかねえ?
私 多分、どうも……。
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(一同シーンとなってしまい、顔見合せている。……間)
[#ここで字下げ終わり]
柳子 ……(フッと夢からさめた様になって)え? なんですって? (立ちあがる)
房代 あたし、怖い!
浮山 すると、ピストルを持っている。
若宮 持っているわけだ。
柳子 (フラフラ歩いて来て)あの、その、須永さん、人を殺した――?
若宮 そうらしい。
柳子 あの、すると、ここに居た須永さん? ……(舟木や私の顔を見まわしているうちに、眼つきが妙になり、歯を喰いしばってシュウと言うような声を出し、それがヒイと聞こえるようになって身体をあお向けにそらしてストンと倒れる)
織子 どうなすって? 柳子さん! 柳子さん!
房代 柳子さん! しっかりなすって!
浮山 いけない! あんまり昂奮するもんだから。
舟木 (これは医者で、落ちつい
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