入って来て、眺めていたが)織子、お前ふるえているんじゃないのか?
織子 いえ、あの……
舟木 馬鹿だな! (妻のふるえているのを賭博のスリルのためだと思っているので、その織子に対してと、賭博をしている柳子たちに対して両方に)
柳子 (そちらを振向きもしないで)馬鹿は、はなっから承知ですよ! さ、行くわよ! こんだ、あんた振る?
須永 いや、僕あ――(弱りきって、モジモジ尻ごみしている)
柳子 そいっじゃ、あたしが振る。あんたが勝ったら、私を丸ごと。私が勝ったらその金と指輪もみんなもらいます。
房代 よして! もう、よしてよ! 怖いわ!
須永 ……困るんです僕。
柳子 なにが困るの。あんたが取ったら、煮て喰おうと焼いて喰おうと、あたしのこと、自由にして踏んづけたっていいし、殺したっていいのよ。
須永 え、殺す!
柳子 そうよ!
須永 …………(柳子を見ていた眼を周囲の一同にまわしてシラリシラリと見ている)
浮山 ハハ、ハハ、だから、いいじゃないか、冗談なんだよ。自由にしていいんだから、なんにもしないで置いといてもいいんですよ。そうだろ? ハハ!
須永 はあ。……(その浮山を見て、弱々しく
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