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柳子 (熱中して、そのような人たちには目もくれない)弱ったてえセリフは無いでしょ。さ、行くわよ、あたしが振るから、あなたが指すのよ。ダイスじゃメンドくさいから……(言って壺の中のダイスの一つを残し、他をビュツと投げる。それが室のどこかの壁に当ってカチッカチッと音)丁半で行くわね! よくって!
須永 困りますよ。(助けを求めるように周囲の人たちを見まわす。しかし誰も何とも言わない)
柳子 ハハ! (ヒステリックに笑って、壺を振る。カラカラとサイコロの音)行きます、そら、はい! (壺をパッと伏せる)……丁か、半か? あんたよ須永さん!
須永 こ、困るんです。
柳子 困るたあ、なんて言いぐさ? ここまで来て卑怯だわよ。さ、言いなさい!
浮山 仕方がないじゃないか、言いたまえよ。
須永 どうも……(柳子の眼をちょっと見ていてから)じゃ、丁です。
柳子 よし、勝負っ! ……(パッと壺を取る。一同の視線がそのサイコロに集中する。柳子が、いっぺんにガクッと膝を倒す)
浮山 ……だから、よしゃいいんだ。
柳子 ……(無言で、指輪を須永の膝の所へ押しやる)
私 ……(三四歩前に出て
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