須永 ええ。(うれしそうに、立ちかける)
柳子 ……じょ、じょ、冗談、あんた! よく知らんは無いでしょう! モモちゃん、もうちょっと待っててよ。ようし!(パッと立ってマントルピースの上にのせてあったダイスの壺を持って来て、須永の前にドンと坐り)こんだ、これでいっちょう!
浮山 よした方がいい。とても駄目だ。なんか附いている須永君には。
柳子 いいわよ、ね! (カラカラと壺の中でダイスを振る。昂奮し切っている)
浮山 だってお柳さん、すっかりはたいて、なんにも無いんだろ?
柳子 なあに、ええと……(自分の身辺をさがす)
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(そこへ、若宮が足音を立てないでキョトキョトしながら入って来て、突っ立ったまま、須永の顔に眼を据えて見ている……)
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柳子 ようし、これ! (左の薬指から指輪を抜いてトンと置く)これを張ります。こんでも、小さいけどダイヤが入ってる。その代り須永さん、あんたも、それそっくり賭けるのよ。
須永 弱ったなあ。
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(そこへ、若宮の後から、私と省三と織子も入って来る。私の顔も省三の顔も織子の顔も青い。……)
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