く生き抜こうと思えばこそ、こうやって自分の血液まで売ったりして闘っているんじゃないですか!
私 そうなんだ。君のその言葉の中にだって、生きようと思えばこそ死にもの狂いに――なんと、生きようと死にもの――死だ。……おかしなもんだなあ、人間なんて。
省三 ……(ニヤリとして)奥さんに死なれた事が、そんなに、あなたにこたえたんですかね?
私 え? ……(びっくりして相手をしげしげと見ていた末に、乾いた、ほとんど明るいと言える笑声をだす)ハハ、そうさ、そうかも知れんね、フフ。……とにかく、どうも僕など、もう、個々人の生死の問題、つまり自分がどう生きてどう死ぬかと言う、つまり言えば生命観と言うか――そんなものと切り離すことの出来るような形では、社会革命の事にしろ戦争の事にしろ、もう考える事が出来なくなって来た事は事実のようだね。
省三 そりゃ、そうですよ。そうなんですもの。第一、あなたの奥さんが亡くなられたのは――その病気になられたのは身体の弱いのを無理して組合運動や方々のストライキの応援に歩かれたと言うのが直接の原因だそうじゃないですか? 兄が言ってましたよ。
私 うん、そう。
省三 だからで
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