すよ、それもつまりあなたの言う、個人の生死が社会改造の仕事の中にチャンと組みこまれた形としてですね、奥さんの死は無意義ではなかったと言う事だから――
私 いや、私の言ってるのは、そんな事じゃないんだ。そんな、つまり、公式のようなものを、いくら持って来られてもだな――いや、これは君にはわからん。
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(短い間)
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省三 ……あなたには、それはわかっているんです。僕はそう見ます。それが良いか悪いかは別問題として、あなたにはわかっているんだ。それをしかし、言いもしなければ実践もしないで、そうやっているのは、何かズルイ、世間の動いて行く様子を見送れるだけ見送って、そのうち調子の良い方へナニしようと言うふうな――いえ、オッポチュニストであなたがあるなどとは思っていませんけどさ、すべての事を一寸のばしにのばしといて、今現にこんなふうに又反動しかけてる、なんかエンショウ臭くなって来ている、情勢の中でですよ、二つの勢力のどっちにも附くまいと言う――一種のサボタージュと言うか――つまり第三の道などを言い立てて、なにもしないでいるのは、結局は、左右いずれの勢力に
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