な気持になる事は無いのか?
省三 ハハ、アッハハ、ヘヘ!
舟木 その矛盾に気が附いていればいいんだ、自分が、気が附いていれば、分裂じゃない。病気じゃない。
省三 ヘヘ!
舟木 気ちがいは笑うよ。
省三 ハハ、ヒヒ、アッハハ……(その笑い声の尾の所でヒー、ウーと泣き出している)
織子 省三さん、もうあなた――(省三の肩に手をかける)
舟木 (その弟の姿をジッと見ていてから)……お前の苦しいのは、多少わかる。……だから俺あ言ってるんだ。もっと落ちついてくれ。三階の先生も、こないだ言ってたろう、第三の道が無いわけではない。俺は医者で深いことはわからんが、第一の道でも第二の道でもない、だな。それを見つけるには先ず落ちつく事だ。お前はちっとあの先生とでも話して見ることだ。
省三 (織子の手を不愉快そうに振り切って立ちあがる。涙の流れた顔をゆがめて再び笑う)ヘヘ! おかしいですよ! 矛盾は知ってるんだ。血を売ったって、しかし、心臓を売ったって、しかし、おれたちは叩き倒さなければならん奴らを叩き倒して見せる! 見ていろ! どうせ戦争で捨てた命だ。理屈じゃ無い、憎くて憎くて、俺あ憎くてたまらないんだ!
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